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大津地方裁判所 昭和44年(わ)52号 判決 1975年12月16日

本籍

韓国全羅南道海南郡黄山面虎洞里

住居

大津市中央一丁目七番一九号

パチンコ店、レストラン経営

明本憲機こと

明魯善

大正三年一〇月八日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官清水鉄生出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一〇月および罰金八〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは金四万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

ただし、この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は昭和二六年頃から、大津市橋本町六五番地でパチンコ店「大統領」(のち「ホンコン」と改称)を、昭和三九年頃から京都市東山区五条通り東角でパチンコ店「五条マンモス」を、昭和四〇年五月頃から同市同区祗園花見小路通り古門前角でレストラン「装苑京都」をそれぞれ営み、さらに昭和三五年頃から大津市菱屋町一番地で豊川裕次名義でパチンコ店「ニユーヨーク」を、昭和三七年頃から右同所で盧福名義でレストラン「装苑大津」(のち「天山飯店」と改称)をそれぞれ営んでいるものであるが、事業拡張資金の備蓄などのため自己の所得税を免れようと企て、

第一、昭和四〇年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において所得金額が一七、八一〇、六一四円で、これに対する所得税額が八、一五〇、九〇〇円あるのにかかわらず、売上金の一部を架空名義預金に預け入れるなどの行為により、所得の一部を秘匿したうえ、昭和四一年三月一一日大津税務署において、同税務署長に対し、被告人名義で所得金額が零、これに対する所得税額が零である旨過少に虚偽記載した確定申告書を提出したほか、豊川裕次名義および盧福心名義で内容虚偽の確定申告書をそれぞれ提出し、もつて右事業年度の所得税八、一五〇、九〇〇円を逋脱し、

第二、昭和四一年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において所得金額が四一、六九二、一三一円で、これに対する所得税額が二二、八二〇、一〇〇円であるのにかかわらず、前同様の行為により所得の一部を秘匿したうえ、昭和四二年三月一三日大津税務署において、同税務署長に対し、被告人名義で所得金額が五、一四三、〇九二円、これに対する所得税額が一、四九七、二一〇円である旨過少に虚偽記載した確定申告書を提出したほか、豊川裕次名義および盧福心名義で内容虚偽の確定申告書をそれぞれ提出し、もつて右事業年度の所得税二一、三二二、八九〇円を盧脱し、

第三、昭和四二年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において、所得金額が三八、一二三、八二七円で、これに対する所得税額が二〇、四八三、四〇〇円であるのにかかわらず、前同様の行為により所得の一部を秘匿したうえ、昭和四三年三月一一日大津税務署において、同税務署長に対し、被告人名義で所得金額が七、四三三、八一三円、これに対する所得税額が二、五三六、九〇〇円である旨過少に虚偽記載した確定申告書を提出したほか、同月二日同税務署長に対し、豊川裕次名義および盧福心名義で内容虚偽の確定申告書をそれぞれ提出し、もつて、右事業年度の所得税一七、九四六、五〇〇円を逋脱し、

たものである。

(証拠の標日)

判示全事実につき

一、被告人の当公判廷における供述

一、第一回、第一三回各公判調書中被告人の各供述部分

一、被告人の検察官に対する各供述書

一、大蔵事務官作成の被告人に対する各質問てん末書

一、第四回、第一〇回各公判調書中証人今井友一の、第一一回公判調書中証人江尻清の、第一二回公判調書中証人明本和子こと盧福心の、第一三回公判調書中豊川裕次こと盧光春の各供述部分

一、森邦彦、明本和子こと盧福心、豊川裕次こと盧光春、今井友一の検察官に対する各供述調書

一、大蔵事務官作成の明本和子こと盧福心、豊川裕次こと盧光春、豊川幸子こと岩田幸子、須賀照夫、高山茂男岸本トキ子、上田市之助、荒木重市、田ノ上関子、今井友一に対する各質問てん未書

一、大蔵事務官江尻清作成の44・2・18付(昭和四四年二月一八日付の意味である。以下同)、44・1・10付、同林彭作成の44・1・13付、44・1・21付、同中沢光雄作成の43・1・17付、44・1・17付(二通)各調査てん末書

一、大蔵事務官中沢光雄ほか三名作成の銀行調査てん末書

一、検察官逢坂貞夫作成の報告書二通

一、明本憲機作成の44・1・17付、44・1・25付各上申書

一、次の者の作成した各確認書および取引金額についてのの回答書

柴田淑子、井上幾之輔、寺井利男、若山陸生、東野時秋、酒井徳太郎、古川元三

一、大津市長作成の地方税についての照会回答書

一、押収してある保険料領収証ほか一綴(昭和四五年押第一九号符号八の一)、五条マンモス大津 ニューヨーク大津ホンコン売掛帳一 (同号符号三二)、手貸元帳六枚(同号符号五四)、明本賢一、豊川裕次分ターム・ローン割賦償還元帳二枚(同号符号五五)、普通預金通帳(明本賢一名義)四冊(同号符号六〇ないし六三)

判示第一の事実につき

一、大蔵事務官作成の証明書五通(ただし、明魯善の昭和三九年度分、昭和四〇年度分、盧福心の昭和三九年度分、昭和四〇年度分、豊川裕次の昭和四〇年度分各所得申告書の内容を明かにしたもの)

一、大蔵事務官林彭作成の44・1・24付、同江尻清作成の44・2・20付各調査てん末書

一、京都府東府税事務所作成の地方税についての照会回答書

一、明本憲機作成の44・2・15付上申書

一、山際電気大阪支店作成の「装苑明本賢一)調査依頼の件」と題する書面

一、次の者の作成した各確認書および取引金額の照会についての回答書

株式会社井筒屋商店城本某、石川敏樹、小野考一、小林作次郎、喜多川吉雄

一、検察事務官作成の売渡証書謄本三通、不動産売買契約書謄本一通、権利証書謄本二通、契約証書謄本一通

一  押収してある大津装苑売掛帳一綴(同号符号二)、大津装苑売掛金台帳一綴(同号符号三)、四〇年度出前売掛帳一綴(同号符号四)、保険料領収書一綴(同号符号八の二)、領収書一枚(同号符号一〇の五)、価格差補償契約書一綴(同号符号一四)、不動産売買契約証書等一綴(同号符号一六)、宅地調査資料(同号符号一九)、大津装苑備品台帳一綴(同号符号二〇)、四〇年京都装苑経費台帳一綴(同号符号二二)、登記申請書等一綴(同号符号二四)、権利証書一綴(同号符号二四)、不動産売買契約証書一通(同号符号二六)、大津装苑調理部仕入帳一綴(同号符号三四)、京都装苑仕入台帳(四〇年)一綴(同号符号三九)、四一年度京都装苑買掛帳三綴(同号符号四一の一ないし三)、大津装苑三九年度分買掛台帳一綴(同号符号四二)、第三期第四期売掛金台帳各一綴(同号符号四三、四四)、装苑と表示ノート一冊(同号符号五〇)、無題ノートブツク一冊(同号符号五一)

判示第二の事実につき

一、西脇実の検察官に対する供述調書

一、大蔵事務官作成の証明書三通(ただし明魯善、盧福心、豊川裕次の昭和四一年度分各所得申告書の内容を明かにしたもの)

一、次の者の作成した各確認書および取引金額についての照会回答書

喜多川吉雄、名古屋国税局監視課、竹中次男、伊室重孝、山尾平、松井喜久夫、野村一郎、井口幸雄

一、(株)三洋物産佐藤某作成の売掛金照会回答書

一、押収してある大津装苑売掛金台帳二綴(同号符号一および三)、四二年度売掛金台帳一綴(同号符号五)、四一年京都装苑売掛金台帳一綴(同号符号六)、土地賃貸契約書ほか一綴(同号符号九)、領収証二枚(同号符号一一および一二)、四一年京都装苑経費明細簿一綴(同号符号一八)、大津装苑金銭出納帳一冊(同号符号三二)、大津装苑物品仕入帳一綴(同号符号三五)、大津装苑喫茶部仕入帳一綴(同号符号三六)、京都装苑仕入帳一綴(同号符号四〇)、四一年度京都装苑買掛帳三綴(同号符号四一の一ないし三)、第五期売掛金台帳一綴(同号符号四五)、給料明細表一綴(同号符号五二)

判示第三の事実につき

一、山本国夫、黒崎勇三郎、居戸巳之一、藤田芳子の検察官に対する各供述調書

一、大蔵事務官作成の山本国夫、黒崎勇三郎、武田茂雄、居戸巳之一、有村憲二に対する各質問てん末書

一、大蔵事務官作成の証明書三通(ただし、明魯善、盧福心、豊川裕次の昭和四二年度分各所得申告書の内容を証明したもの)

一、大蔵事務官林彭作成の44・1・24付調査てん末書

一、次の者の作成した各確認書および取引金額につての照会回答書

野村一郎、井口幸雄、東野時秋、倉本静子、多田田鶴、日野四郎、藤村力

一、押収してある大津装苑売掛金台帳一綴(同号符号一)、四二年度売掛金台帳一綴(同号符号五)、四二年一二月以降売掛金台帳一綴(同号符号七)、土地賃貸契約書ほか一綴(同号符号九)領収証一枚(同号符号一三)、大津装苑領収書綴一綴(同号符号二一)、不動産売買契約書一枚(同号符号二七)、橋本町売買契約書一綴(同号符号二八)、売買契約書および権利書一綴(同号符号二九)、佐伯建設工事関係書類一綴(同号符号三〇)、領収書六枚(同号符号三一)、大津装苑買掛帳一綴(同号符号三七)、大津装苑支払明細表一綴(同号符号三八)、第六期売掛金台帳一綴(同号符号四六)、買掛帳二綴(同号符号四八、四九)、給料支給明細表一綴(同号符号五三)、京都堀川今出川売買契約書一綴(同号符号五六)

(法令の適用)

被告人の判示各行為はいずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、所定刑中いずれも懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を加算し、その刑期および金額の範囲内で、被告人を懲役一〇月および罰金八〇〇万円に処することとし、右罰金を完納することができないときは同法一八条により金四万円を確日に換算した期間被告人を労役場に留置することとしたうえ、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予し、訴訟費用は刑事訴訟法一八一条一項本文により、これを被告人に負担させることとする。

よつて主文の通り判決する。

(裁判長裁判官 滝川春雄 裁判官 横田勝年 裁判官 仲野旭)

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